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■『戦旗』1629号(2月5日)4-5面

 
物価高騰―生活破壊に対し
 賃金大幅引き上げをかちとろう
 階級的労働運動を前進させよう
  
                    
                  
中央労働運動指導委員会




 岸田政権は昨年一二月一六日、安保関連三文書を閣議決定し、軍事予算を倍増して敵基地攻撃能力の保有・戦争継続能力の増大などを進めようとしている。後年度負担分も含めて五年間で六〇兆円の財源を注ぎこもうというものだ。戦争する国への道を歩もうとする岸田自公政権の方向は、労働者人民の生活実感とはかけ離れており、その要求に逆行するものだ。実際、岸田政権の支持率は、20%台が四カ月連続し、不支持率は40%を超えている。こんな政権が進める戦争する国づくり・大増税を絶対に許してはならない。
 23春闘では、「軍事費ではなく賃金を上げろ!」の声を、職場から、全国の街角からあげていこう。戦争法反対闘争を上回る闘争を組織し、岸田自公政権を打倒しよう。


●第1章 労働者を組織し、労働者階級の闘いを前進させよう

 23春闘では、第一に、物価の高騰に対して、賃金を引き上げる闘いを組織しよう。世界を見れば、インフレに対して大規模なストライキが起こっている。賃金引き上げはもちろん、コロナ禍で過重な労働を余儀なくされてきた看護師や運送労働者などが、働き方の改善や要員不足の解消を求めて立ち上がっている。それまで労働組合がなかった職場での労働組合結成が相次いでいる。日本においてもそうした闘いを組織していこう。
 昨年一二月二三日に発表された一一月の消費者物価指数は前年同月比3・8%上昇し、食品や光熱費など生活必需品の「基礎的消費支出」では5・7%の上昇だ。特に電気・ガスは20%以上、油・調味料・食料品も大幅な値上げが続き、今年の一月から四月にも食品で七〇〇〇品目以上が値上がりする。物価高騰はまだまだ収束しない。
 連合は、今春闘で5%(ベースアップ相当分3%、定期昇給分2%)の賃金引き上げを求めている。しかし、物価は4%前後で推移しており、賃金の底上げ分「ベースアップ」が4%以上、定昇分と合わせて6%前後の引き上げでないと、実質賃金は目減りすると言われている。
 日経連は一月一七日に発表した経営労働政策特別委員会(経労委)報告の中で、大幅な賃上げを「社会的責務」としながらも、「5%の賃上げ」については「慎重な検討が必要」と否定的だ。
 こうした中で、全労協やけんり春闘実行委をはじめとした闘う労働組合は、「誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を!」「雇用/賃金/労働時間/労働環境/社会保障の要求をストライキで闘い取ろう!」などを掲げて、物価上昇を上回る大幅な賃金引き上げを目指して闘いを開始している。こうした闘いを支持し、23春闘を粘り強く闘おう。
 第二に、最低賃金の引き上げ、最低賃金一五〇〇円を目指し、今春、最低賃金の「再改定」を求める闘いを進めよう。最低賃金の引き上げは、全ての低賃金労働者の賃金引き上げにつながる重要な闘いだ。フランスやドイツでは、物価上昇に伴って、二〇二二年の一年間の間に数回最低賃金の引き上げが行われている。こうしたことは、日本においても政権の意思さえあれば可能だ。岸田政権に、最低賃金の引き上げ-「再改定」を強く求めていこう。
 第三に、未組織労働者、外国籍労働者の組織化を進めよう。非正規職労働者は、今や全労働者の約四割を占めるに至っている。その多くが未組織労働者だ。その結果、労働組合の組織率は低下し、現在は16・5%にまで低下している。そもそも中小・零細企業には労働組合がない。さらに外国人技能実習生らは、最低賃金未満で長時間労働を強いられている場合も少なくない。非正規労働者をはじめとした未組織労働者や外国籍労働者を、闘う労働組合へと組織していくことは階級的労働運動の前進にとって重要な闘いの一つだ。
 第四に、労働組合つぶしの権力弾圧と闘おう。権力は、連帯労組関生支部に対する組織破壊を狙った弾圧、闘うユニオンの会社への申し入れ行動などに対する不当な弾圧、さらには韓国サンケン労組支援の国際的な労働者の連帯の闘いに対する弾圧など、決して許すことのできない弾圧をかけてきている。こうした権力の攻撃は、世界の労働者の長い年月をかけた闘いによって勝ち取ってきた内容-憲法二八条を解体する攻撃だ。権力をふるっての労働運動破壊は日本の労働運動低迷の一因になっている。歴史が証明するように、もの言う組合を弾圧することは、戦争へと突き進む国家の常とう手段だ。闘う労働組合、闘う労働者人民を防衛し、弾圧に対する反撃の闘いを強化しよう。
 第五に、労働法制の規制緩和、改悪を許さない闘いを進めよう。政府-資本は、「働き方改革」「多様な働き方」の美名のもとに、「解雇の金銭解決」「労働時間法制の規制緩和」などを進めようとしている。昨年末に労働政策審議会・労働条件分科会を開催し、裁量労働制について専門業務型として「銀行、証券会社のM&Aに関わる業務」の追加を承認した。資本の側は、「PDCA型業務が現行法でも可能」として、更なる労働時間法制の規制緩和(定額働かせ放題)を狙っている。労働法制の規制緩和を許さず、労働者保護法制の強化をかちとろう。
 第六に、岸田政権の進める改憲・大軍拡・大増税・戦争体制構築と闘い抜こう。何よりも軍事費の倍増―敵基地攻撃能力の保有をはじめとした大軍拡との闘いや、日米・日米韓軍事演習反対、辺野古新基地建設阻止、琉球弧のミサイル基地化、岩国基地強化反対をはじめとした反戦反基地闘争の強化。老朽原発再稼働反対、汚染水の海洋放出反対など原発反対の闘い。気候変動―地球温暖化阻止。三里塚空港反対・市東さんの農地の強制執行阻止。全人民的政治闘争に労働者人民を組織しよう。
 第七に、地域ユニオン、産業別・業種別労働組合のそれぞれの活動を前進させると共に、地域ユニオンを横糸に、産業別・業種別労働組合を縦糸にした共闘構造を各地につくり、さらに大衆的政治闘争と結びついた階級闘争の構造建設を進め、もって階級的労働運動の前進をかちとろう。
 23春闘では、以上のたたかいを全力で闘い抜こう。
 以下、最低賃金の引き上げ、外国人労働者の組織化・技能実習生問題、介護労働運動の組織化の三領域での闘いについて、さらに詳しく見ていきたい。


●第2章 最低賃金「再改定」を 最低賃金一五〇〇円に

 消費者物価指数が上昇している。物価の上昇は、所得が低いほど、支出に占める生活必需品の割合は大きい。低所得層の生活破壊が深刻になっている。厳しい寒波が襲う中で暖房代節約のために寒さに凍える人も増えている(グラフ①)。
 この現実の前にまずすべきことは生活破壊に直面する低賃金労働者の賃金底上げをすることだ。しかし岸田首相は財界に「賃上げのお願い」をするばかりで、自らの権限でできるはずの最低賃金の「再改定」には一切触れない。昨年一〇月に最低賃金が三一円(3・3%)引き上げられ、月の収入は、法定労働時間上限で働いた場合、三一円×一七二時間=五三六三円増えることになるが、これでは物価高騰にはまったく追いつかない。生活はますます厳しくなるばかりだ。
 最低賃金法一二条では「必要があると認めるときは……決定をしなければならない」と明記されており、最低賃金の改定は一年に一回だけとは決められていない。必要があるのに改定しないのは怠慢としか言いようがない。いま全国で、各地の労働局や最低賃金審議会への再改定要求が続々と出され、運動が急速に拡大している。
 一方で、企業物価指数も10%を超え、物価高倒産=(原油や燃料、原材料などの「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力等で価格に反映できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できずに倒産した企業)は五か月連続で最多を更新し、二〇二一年(一三八件)の二倍以上になる(グラフ②)。
 体力がぜい弱で、価格反映の交渉力が弱い下請け企業や中小零細企業の中には、賃金引き上げどころではないという企業も少なくない。だからこそ中小企業支援策を早急かつ強力に推進することでしか最低賃金の引き上げをはじめとした賃金引き上げは実現しない。賃金引き上げを実現するための政策にこそ予算を回すべきだ。軍事費倍増ではなく、生活防衛のための賃金引き上げに予算を使うべきだ。
 とりわけ、公的部門の賃金引き上げは、例えば介護や保育、医療など、国の制度設計の結果として労働者の賃金が低く抑えられている現実がある。賃金引き上げが重要だと考えるのなら、まず国の主導で底上げできる最低賃金と公的部門の賃上げを取り組むべきだ。

政策の失敗の付けを労働者に押し付けるな
 労働分野の規制緩和によって低賃金・不安定の非正規雇用労働者が急増し、低所得労働者が増加することで日本の平均賃金は三〇年間上がっていない。実質賃金は一九九五年以来下がり続けている(グラフ③)。
 一九九五年は、当時の日経連が「新時代の日本的経営」を打ち出し、人事労務管理の大転換を行った年である。以来、「雇用柔軟型」とされる非正規雇用労働者の急増に規制緩和で応え続けてきた政治の結果が大量の低所得労働者層となって、この時期以降に就職した若年層を中心に生み出された。また、成果主義に基づく労働者間の競争激化は、長時間労働とストレスによる過労死を生み出すと同時に、家庭生活に振り向けられるべき時間もエネルギーも労働者から奪い去っていった。こうした労働の変化が少子化の大きな要因となっていることを全く無視して、労働者(特に女性)に責任を押しつけるなど決して許すことはできない。
 少子化のもう一つの大きな要因は、教育費を中心とする子育て費用の負担である。社会の未来のために教育費を無償化している先進国は多いが、日本では教育に対する予算は極めて低い(グラフ④)。
 保育から大学・専門学校までの教育の無償化、すでに大きな負担となっている奨学金の免除と低賃金労働者の賃金底上げ=最低賃金の大幅引き上げを少子化対策の柱とすべきだ。

全国一律一五〇〇円を実現しよう!
 現在、最低賃金は東京一〇七二円、高知など一〇県は八五三円で、一時間当たり二一九円もの差がある。一九七八年以来、全国の都道府県を四つのブロックに分けてブロックごとに最低賃金引き上げの目安額を中央最低賃金審議会が提示してきた。各地方審議会で決定される最低賃金額の整合性が根拠とされてきたが、結果的に都道府県ごとの最低賃金額の差は拡大してきた(グラフ⑤)。
 この地方格差は地方の過疎化と都市の人口集中問題を作り出している。同じ仕事でも働く場所が違えば大きな格差があり、同一労働同一賃金の原則に反する制度になっている。さらに最低賃金の格差は地方の過疎化と都市の人口集中の主要な要因にもなっている(グラフ⑥)。
 全国に展開する事業やチェーン店で働く非正規雇用労働者の多くがその地域の最低賃金を基準にして雇用されている。例えば郵便局の配達員、コンビニエンスストア、居酒屋チェーン、衣料品などの小売りチェーンなど、挙げればきりがないが、その地域の最低賃金または最低賃金の一〇月改定を読み込んでいくらかの上乗せをした時給が入職時の時給に設定されている。同じ商品やサービスを同じ価格で提供し、同じ就業規則によって労働条件が決められ、同じマニュアルに従って働いていても、賃金だけが働く場所によって異なり、最高額の東京都と最低額の県では一時間当たり二〇〇円以上も時給に差が出るのは、全く不公正としか言いようがない。早急に全国一律に向けた最低賃金制度の改正をする必要がある。そして一律の水準は一五〇〇円とすべきだ。これは国際的な最低賃金の水準にかろうじて近づく額であり、また、フルタイムで働いて年収三〇〇万円に到達する額である。
 最低賃金の大幅な引き上げ、再改定を勝ち取ろう。


●第3章 外国人労働者を組織し、外国人技能実習制度廃止を

 いまこの日本社会では、多くの移住労働者が様々な現場で働いている。その中でも外国人技能実習制度の下で働きに来た実習生たちへの暴力、解雇、賃金未払いなどが深刻な社会問題となっている。現在技能実習生は二〇二二年六月末現在で約三二万八〇〇〇人、九月時点の六〇七〇万人の雇用者全体の0・5%にのぼる。特定技能制度が導入されてからは、コロナ禍の中で帰国できないことから特定技能への移行(約九万人)も増加している。また「技術・人文知識・国際」「留学生」ビザで働く労働者など、いまや移住労働者を目にしない日はない。だからこそ日本の労働者、労働組合はその現実に目を背けてはならないし、制度そのものを問う闘いを全力で取り組んでいかなければならない。

外国人技能実習制度とは
 外国人技能実習制度は一九九三年に創設され、その基本理念として「わが国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発地域等の経済発展を担う『人づくり』に寄与することを目的として創設された」(外国人技能実習機構HP)と謳われている。しかし、本質はかつての日本帝国主義による大東亜共栄圏構想の下でなされた労働力調達や強制連行と同じ質のものであり、外国人の労働力政策として創設されたものだ。
 それは、国連人権委員会や米国務省人身売買年次報告書において、外国人技能実習制度が「人身売買」「奴隷労働」と批判されていることが、技能実習生の現実を物語っている。
 外国人技能実習生の相談を取り組んでいる労働組合・支援団体は、創設当初から様々な問題点を挙げていた。そのような中、昨年には古川法務大臣(当時)が年頭所感で制度の見直しを表明せざるを得なくなっていた。それを受け、五月には外国人技能実習制度の廃止を求める全国キャラバンが取り組まれた。
 そして昨年一二月一四日には、制度見直しに向けての政府主導の有識者会議が行われた。この検討会議では、①制度の存続か廃止か、②特定技能に一本化するか、③監理団体のあり方、を巡って話し合われ、今春に中間報告をまとめ、秋ごろに最終報告書を提出する予定だという。会議の中では「制度の目的自体が乖離している」「人権侵害と結びつく構造的な原因だ」との意見も出されている。
 技能実習制度の問題点が明らかになると、これを克服する制度として特定技能制度も導入されてきた。しかし、これも在留期間の上限や家族滞在など技能実習生とあまり変わらない多くの問題を抱えている。

実習生の実態
 各地の支援団体には、「暴力を振るわれた」「未払い賃金がある」「強制帰国されそうだ」などと多くの相談が連日寄せられている。福山ユニオンたんぽぽが取り組んだ岡山での暴行・傷害事件はマスコミにも大きく報道され、古川法務大臣(当時)が「人権侵害はあってはならず、入管庁に対して速やかに対応するよう指示した」と述べるなど重大な社会問題となっている。
 また、ユニオン北九州が取り組んでいる事例は、寮のルールを四回違反したという理由で退職届に強制的にサインさせられた上に強制帰国させられようとしているものだった。強制帰国は阻止し実習生をシェルターに保護した上で、会社・監理団体と交渉しているとのことだ。団交では、ルール違反を一回しただけで山形工場に移動させられるなど、はなはだしい人権侵害の実態も明らかになったという。その他、暴言(通訳がいないので何を怒られているのかわからない)、実習内容が違う仕事をさせられている等の理由から失踪する事態も数多く発生している。

労使対等原則が貫かれた社会の実現を
 このような相談に「移住連」「外国人技能実習生権利ネットワーク」を中心に、全国各地の支援団体、全統一などの労働組合が地道に相談対応している。それだけでなく、制度廃止を求める全国キャラバンを通した運動の拡大、省庁交渉などでの政策提言など精力的に取り組みが展開されている。
 日本人の少子化、労働力人口の減少という現実の中で、いまや外国人労働者は日本の社会にとってなくてはならない存在となっている。しかし外国人技能実習制度という労働力政策は奴隷労働、人権侵害、労働基準の崩壊、社会規範・倫理の崩壊、民主主義の劣化・崩壊を生み出した。そのことはまさに日本社会全体の課題であり、外国人労働者の問題を取り組むことは日本の労働者・労働組合の責務だ。今こそ外国人技能実習制度廃止に向けた取り組みを強め、労使対等原則が担保された社会を作り上げていこう。

入管法改悪案上程阻止を闘おう
 岸田政権は、二一年に提出したものの市民の闘いによって廃案になった入管法改悪案を、骨格を残したうえで難民申請者の母国への強制送還を可能とする法案を今通常国会に提出することを目論んでいる。この法案の提出を決して許してはならない、全国の仲間と共に改悪案提出阻止、入管法―入管体制解体の闘いを繰り広げていこう。


●第4章 介護労働者、介護労働運動を組織しよう

 産別・業種別運動の重要な一翼である介護労働運動ではここ数年、攻防が熾烈化している。公的介護制度はサービス単価が政府によって決定される準市場だ。単価が決まっているので利潤を得る方法はサービスの手抜きか、労働強化と強搾取しかありえない。その上、介護保険は創設から二三年、一部の例外を除き、サービス単価を切り下げ続けてきた。その結果はホームヘルパーの有効求人倍率一五倍に表れているように、介護人材不足と毎年記録更新を続けている事業者倒産件数の拡大が続いている。介護現場は限界だという声が満ちている。

介護保険制度の改悪をいったん阻止
 そんな中で、昨年は第九期介護保険計画(二〇二四年度開始)の内容をめぐる攻防が争点化した。厚労省(そのバックには財務省)が当初提案した内容は、①利用者負担額二割、三割の拡大、②ケアマネジメント有料化、③要介護1、2の介護保険からの切り離し、④IoT導入による配置基準の切り下げなどであった。
 ①については政府が流布するイメージは「高所得者には応分の負担を」というものだが、実態から行くと対象の高齢者はとても高所得などとは言えない、ワーキングプアレベルの収入に対して負担を強いるシステムになっている。政府はイメージをつかみにくい表現を駆使しているが、一割から二割、三割になるというのは、支払いが二倍、三倍になるということなのだ。すでにサービス控えも発生しており、研究者によってはこの政策によって状態悪化が集団的に発生し、介護費用はむしろ増大するという指摘もある。②も利用控えを起こすリスクが高い。③は既に要支援1、2が介護保険から切り捨てられた結果、労働者の処遇低下が発生し、さらなる人手不足、事実上のサービス提供停止など、労働者と利用者双方の状態を悪化させたことへの反省が欠けている。④は労働者不足の現状に合わせて施設などに配置しなければならない人員を減らしてしまおうという乱暴なものだ。結局、財務省・厚労省の政策の根本には福祉予算の抑制・削減以外のことは入っていないのだ。
 介護労働者たちは一年間を通してこの攻撃を跳ね返す取り組みを進めた。介護労働者に広く訴えることはもちろん、利用者、家族、事業者も巻き込んで反撃の陣形を作り上げようと学習会や集会を組織し、また、厚生労働委員会に所属する国会議員を交えた企画も実施した。ウクライナ戦争、参議院選挙を受けて、岸田が防衛費倍増(当然狙われる予算削減の対象は福祉だ)をぶち上げた結果、攻防の厳しさが一段と増した。しかし、介護労働者、利用者、家族、事業者の危機意識も一気に高まった。広範なネット署名も取り組まれた。
 そんな中で、財務省・厚労省交渉を推進した介護労働者たちは、一〇月厚労省前座り込み行動、一一月中央交渉を実現し、福祉政策をめぐる攻防を広く可視化した。二〇二二年の闘いはいくつかの成果を残した。
 まず、第九期介護保険計画は、いくつかの点で改悪を押し返した。②と③の改悪は第一〇期計画への先送りに追い込んだ。④は少なくとも第九期での実施は阻止した。また、地方でのホームヘルプの移動時間が報酬に反映されないために事業者が労働基準法を守れない問題についても、急に調査が始まるなど厚労省として対処せざるを得ないところに追い込んでいる。一方で、当初は言っていなかった保険料の増額に踏み込んできた。当事者の広汎な反撃で実現できなかった福祉削減を高齢者全体からの保険料増額で補おうという魂胆だろう。

二〇二三年の闘い
 二〇二三年は引き続き、福祉削減との攻防、介護職場と利用者の暮らしを守ることが階級的な任務となる。二〇二二年の闘いは間違いなく成果を生んだが、多くの成果は先送りが中心で、年末の各種審議会での議論を見ても、財務省・厚労省はあきらめていない。昨年沸き上がった広範な反撃を一過性のものとせず、介護・福祉労働者の組織化に努めなければならない。加えて防衛費倍増の問題もある。民衆を守るのはミサイルか、それとも福祉制度なのか。今まで以上に介護労働運動は階級攻防の最前線に躍り出ている。
 全体任務を引き受けきるためにも労働組合への組織強化が重要だ。傾向として権利主張が弱い(良くも悪くも「利用者のために!」という意識が強い)介護労働者の中で、組合組織化に成功した職場は、大なり小なり利用者たちを人とも思わぬ(当然介護労働者も)悪徳経営者の事業所が多い。さきに紹介したように、この業界で儲けようと思ったら、利用者や労働者に割を食わせるしかないのだ。こうした経営はそのようなありかたに異を唱える介護労働者、その団結体である労働組合を激しく攻撃する。二〇二三年もこうした攻防にしっかりと勝っていくことが必要だ。また、自分の生活と目の前の利用者を守るために、団結と闘いが必要であるという確信を一人でも多くの介護労働者に広げ、一職場にとどまらない意識と行動をつくることができる労働者活動家を組織していこう。

 


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